相続税の申告において、どのような人が障害者控除を適用できますか。
父が亡くなり、相続人は、子である私(70歳)と兄(72歳)と妹(65歳)の3人です。それぞれ相続により財産を取得します。妹は身体障害者手帳1級を持っていますが、妹は相続税の申告において、障害者控除を適用できるのでしょうか。なお、私たち相続人は、初めて相続を経験します。
妹様は、障害者控除を適用することができます。障害者控除の対象となる人の範囲等は、詳細解説をご確認ください。
相続又は遺贈(以下、相続等)により財産を取得した相続人が一定の者である場合、その相続人が85歳までの年数に応じて一定の金額を相続税額から控除します。
この場合に、障害者控除が受けられる「一定の者」とは、次の全てに当てはまる人をいいます。
- 相続等で財産を取得したときに日本国内に住所がある人(一定の人を除く)
- 相続等で財産を取得したときに障害者である人
- 相続等で財産を取得した人が法定相続人(相続の放棄があった場合にはなかったものとした場合の相続人)であること
対象となる障害者とは、次のいずれかに当てはまる人をいいます。
障害者 | 左記のうち特別障害者 |
@精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人 | 全ての人 |
A児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医の判定により知的障害者とされた人 | 重度の知的障害者と判定された人 |
B精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定により交付を受けた精神障害者保健福祉手帳に障害等級が1級、2級又は3級である人 | 障害等級が1級である人 |
C身体障害者福祉法の規定により交付を受けた身体障害者手帳に身体上の障害の程度が1級から6級までである人 | 障害の程度が1級又は2級である人 |
D戦傷病者特別援護法の規定により交付を受けた戦傷病者手帳に記載されている精神上又は身体上の障害の程度が一定の人 | 恩給法別表第1号表ノ2の特別項症から第3項症までである人として記載されている人 |
E原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定による厚生労働大臣の認定を受けている人 | 全ての人 |
F常に就床を要し、複雑な介護を要する人のうち、精神又は身体の障害の程度が@、A、又はCに掲げる人に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている人 | 特別障害者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている人 |
G精神又は身体に障害のある年齢65歳以上の人で、精神又は身体の障害の程度が@、A、又はCに掲げる人に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている人 |
控除額は、一般障害者か特別障害者かによって、次のとおり異なります。
一般障害者:10万円×85歳までの年数(1年未満切上)
特別障害者:20万円×85歳までの年数(1年未満切上)
ご相談のケースでは、妹様は、身体障害者手帳1級をお持ちとのことですので特別障害者に該当し、400万円(20万円×(85歳ー65歳))を控除することができます。
対象となる相続人の相続税額から上記控除額が控除しきれない場合には、その控除しきれない部分については、その者の扶養義務者の相続税額から控除します。
この場合の扶養義務者とは、配偶者、直系血族および兄弟姉妹の他、3親等内の親族のうち一定の者をいいます。
ご相談のケースにおいて、仮に妹様の相続税額が300万円ある場合には、控除しきれない100万円は、相続税額がある他の相続人(ご相談者様、お兄様)から控除します。どちらから控除するかは任意です。
なお、ご相談のケースでは、今回が初めての相続とのことでしたので関係ありませんが、もし以前の相続で障害者控除の適用を受けている場合には、控除額に制限を受けることがありますのでご注意ください。
障害者控除と聞くと、ご相談のケースのような身体障害者手帳1級や2級をお持ちでないと受けられない印象を抱く方がいらっしゃいます。しかし、上記2の表のとおり、身体障害者手帳6級をお持ちである方も一般障害者として控除が可能です。年齢が進むにつれ、身体障害者手帳をお持ちの方など、障害者に該当される方は少なくありません。該当する場合には、障害者控除の適用もれに気をつけましょう。
<参考>
国税庁HP「No.4167 障害者の税額控除」、「No.4167 障害者の税額控除 障害者の税額控除の対象となる人の範囲」など
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